外国人上司の急増で半強制化の動きも

両社のように社内公用語化には踏み切っていないが、グローバル化の急展開で英語を話すことが“半強制化”されている社員も少なくない。

1999年にルノーの傘下に入った日産自動車の本社には200人超、30カ国の外国人が常駐し、英語ができないと仕事にならない。本社勤務の河合怜奈氏(仮名・33歳)は「人事評価に英語でしっかりとコミュニケーションできるという項目がある。管理職以上になると流暢でなくても、会議で何をいっているかを理解し、ちゃんと自分の意思を伝える人しか残っていない」と指摘する。

そして、いま英語化の波が一挙に押し寄せているのが武田薬品工業だ。昨年、クリストフ・ウェバー氏が社長に就任。外国人社員の増加で英語が必須となりつつある。本社勤務の小林徹氏(仮名・35歳)が語る。

「英語が必要になったのはこの半年、1年の間。世界の拠点に横串を刺した機能別組織に変わり、いまでは部門のトップはほぼ外国人で、その下のクラスも半数以上が外国人で占められている。役職者は海外の社員のマネジメントもする必要があり、英語ができないと昇進候補から外れてしまう」

中堅層の間には必死に英語を勉強している人もいるが、国内営業担当のMR(医薬情報担当者)やR&D(研究開発)関係者のなかには「俺は英語は喋らない」という人もいるという。「しかし、今年度からグローバルな人事評価システムに移行する。上司が外国人なら目標設定や評価面談シートも英語で書くことになるだろうし、英語で説明できないと、評価が下がることになるのではないか」と小林氏は懸念している。

そもそも、ウェバー社長をはじめ外国人の役員や管理職を多数起用したのは長谷川閑史会長だ。その点を日本人社員はどう考えているのかを小林氏に尋ねると、「紳士的な人が多く、口に出す人はいないが、『何てことをしてくれたのか!』と思っている人はいるはず」という。