コスト面からしても太陽光、風力発電は問題が多いが、より大きな問題は安定供給だ。電力が他の資源と違うのは、倉庫やどこかに貯めておくことができないことだ。しかも少しでも電力が足りなくなるとブラックアウト(大規模な停電)を引き起こしてしまう。ブラックアウトすると経済活動は止まり、交通などが麻痺する。死亡事故も起こりうる。
電力問題は、まずは安定的な供給ができたうえで、コストの問題を解決する必要がある。太陽光や風力では常に供給が不安定で、電力会社が神経を磨り減らしている。
「災難は忘れたころにやってくる」と、昔の人は言ったものだが、今年の夏の電力供給は、東日本大震災以来の大ピンチだ。朝日新聞、東京新聞は夏が終わるころになると「今年も原発なしで夏を乗り切った」として、「原発は不要だ」という論調を振りかざすが、毎年、毎年、ギリギリの綱渡りを続けているのが現状で、今年は関西と九州が極めて危険水準にある。
関西電力最大の火力発電姫路第二発電所のうち三号機が5月9日に五号機が6月1日に蒸気タービンの異常振動により緊急停止。両機ともにタービン翼という重要な部品の破損が見つかった。関電では、同じタイプの一号機~六号機のすべてを止めて応急対策工事を行うことになった。復旧は7~8月で、その間、出力が大幅に低下してしまう。電力需要が増大する真夏にかぶる最悪のタイミングだ。
今回、故障が起きた姫路第二発電所は、老朽化した設備を東日本大震災以降に新しく入れ替えたばかりの、“世界最新鋭”の火力発電所だ。もともと関西電力は、「関西の電気の約半分は原子力」というキャッチコピーのCMをつくっていたほどで、原発停止の影響が大きかった。それだけに、姫路第二発電所への期待も高く、関係者のショックも大きい。
関電では、今夏も本来なら定期点検が必要な時期の火力発電所をフル稼働させている。点検を延期させたことで、新たな故障や事故が起きる可能性も高まっている。全国でも老朽化した火力発電所が緊急停止する例は増えており、関電管内では、綱渡り状態の電力供給が続く。