「個々人」の「いま」に密接するグーグル

ビジネスモデルとイノベーションの研究では、ヘンリー・チェスブロウが主張する「イノベーションの乗り物」、つまり革新的な技術は、ビジネスモデルという乗り物に乗せてはじめて価値が出るという考え方も重要です。

たとえばグーグルの「キーワード広告」がそうです。グーグルは優れた検索技術を持っていましたが、それだけでは大きな収益にならず、キーワード広告というビジネスモデルに乗って初めて莫大な収益を上げるようになりました。

キーワード広告の本質は、「個々人」が「いま」欲しているものがわかるという点にあります。その意味では、「one by oneモデル」と名づけてもいい。続々と登場しているクラウド・ファンディングのサービスも同じです。クラウド・ファンディングは「こんな商品をつくりますから出資してください」とネットで小口の出資者から資金調達することをいいますが、実質的に予約販売に近く、事前にニーズをリサーチできるメリットがあります。個人の確定したニーズをベースにするという意味では、これもone by oneモデルです。

ビジネスモデルはさまざまな要素の組み合わせなので、これからも無数のモデルが生まれてくるでしょう。その中からどのようなものが流行るのかを予測するのは困難です。ただ、ITを絡めたビジネスモデルは真似しやすく、寿命が短くなっていることはたしか。持続的な競争優位を手に入れたいなら、かつての越後屋のように、全取り替えするくらいの挑戦が必要なのでしょう。