なぜ、年収1500万円なのに「億超」気取りか
今春のドラマで、女優の木村文乃さんが主演した『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』(TBS系)というのがありました。ごく簡単に要約すると、下は年収250万円の裕福とは言えない主婦から、上は年収5億3000万円のセレブ家庭のママが、名門幼稚園に子どもを通わせながらお受験をがんばったり、ママ同士の友情と葛藤があったり、というヒューマンドラマです。
ここで僕が話したいのは、ママの格付けはエルメスのバーキンのランクで決まるとか、車のランクによる、といった話ではなく、すべての階級を経験してきて、かつすべての階級の顧客と取引している僕の独断と偏見による、年収のイメージと実際のギャップです(編集部注:筆者の金森氏は、東大法学部を卒業後、フリーターでありながら1億円を超える借金を負い、その後、事業に成功)。
●年収750万円 公務員の家庭
まず、年収750万円の公務員の家庭。これは、「通販大家さん」のお客さんでも、年収倍率でいうとすごく貯金がある世帯が多いです。年収750万円で貯蓄額4000万円ということは全然珍しくありません。
だいたいにおいて、公務員の方は生活が地味であったり、官舎にいてコストがかからなかったり、夫婦共に公務員だったりする人が多いです。
当たり前の話ですが、「入るを量りて出(い)ずるを為す」(収入の額を計算し、それに応じた支出を行うこと)ができていることが、家計を運営する大前提です。年収の5倍以上の4000万円の貯金を持つ公務員の家庭は、このライフスタイルが定着しています。ただし、富裕層になる前提条件は備えているけど、これだけで十分とは言えません。
●年収1800万円 大手広告代理店勤務の家庭
次に、前出のドラマでも設定されていた年収1800万円、大手広告代理店勤務の家庭。タワーマンションに住んで、ご主人は会社の女性と不倫して……という話が出てきます。これは、実情に非常に近いです。
先ほどの「家計の金融行動に関する世論調査2014」でも、年収1200万円を超える世帯は、年収1000万~1200万円の家庭より貯蓄ゼロの世帯の比率が多かったですよね。
ここです! 年収1200万~年収3000万円くらいの場所には、ものすごく大きな落とし穴があります。僕はこれを「高収入貧乏の谷」と呼んでいます。
この谷を無事に越えていかないと、富裕層にはなれません。
ここの高収入ゾーンの人たちが谷に転げ落ちる理由は、ずばり見栄と競争心からくる顕示的消費です。
タワーマンション、車、靴、時計、クルーザー、ミシュランのレストラン、海外旅行、他人に対する見栄……で競うようにして顕示的消費を行います。
もちろんローンを組んで買おうとすれば買えますよ。でも、僕に言わせれば、高収入貧乏の谷の人々はレースでいうと「周回遅れ」なのです。