(3)バランス感覚を身につける
成功するグローバル・マネジャーの特徴の中でも最も希少なものの1つが、1つの企業として統一性のあるやり方をする必要性と地域の独自性を出す必要性をバランスさせる能力だ。
シスコ・システムズの開発担当上級副社長、チャールズ・ジャンカルロは、シスコはこの点で重要な教訓を学んだと思っている。シスコがグローバル市場に進出した初期のころは、同社の上層部は、各部門のマネジャーがインドを含む海外市場でそれぞれ独自の販路を開拓することを認めていた。
しかし、それは統一性の著しい欠如を生み出すことにもなった。進出先のすべての国の社員が受け入れる単一の企業文化がない状態になったのである。
新しくグローバル・マネジャーになった人々に、企業理念と現地市場の独自の状況をうまく折り合わせるすべを教えるのは容易なことではない。2つを折り合わせるためには、ダイナミックな変化のただ中にある文化を認識することが必要だ。また、まったく不慣れな環境の中で適度に自立した思考をすることも求められる。経験の浅いマネジャーは、結局、自分の慣れ親しんだやり方にしがみついて、ティーガーデンの言う「本社メンタリティ」にとらわれることになる。でなければ、一種の文化的威嚇に屈して、現地の社員が慣れ親しんでいるものをすべて採り入れることになる。
企業にできるひとつの支援策は、新しくグローバル・マネジャーになった人々が自分の任務に段階的に馴染んでいくのを認めることだ。ティーガーデンは、新任マネジャーをまだ母国の事業所にいる間に海外のプロセスやプロジェクトを管理させることから新しい任務をスタートさせてはどうかと提案している。マネジャーに外国で仕事を始めたとき必要になるスキルを、まだ慣れ親しんだ国にいる間に磨く機会を与えるのである。性急に飛び込むことは、とりたてて効果的なアプローチであるとは実証されていない。