ところが最近の「アンアン」のセックス特集は「彼をいかに喜ばせるか」が主眼となり、女性の主体性は退いてしまいました。おそらく「かわいい」という価値基準がもて囃されることと無関係ではありません。自分の欲望を満たすのではなく、相手にどうみられるかが重要なのでしょう。09年の特集号にはセックスの手順を解説するDVDが付きました。なかでは「絶対に自分からパンツを脱いではいけない」と注意されます。それは「女性が積極的になりすぎると、男性のプライドを傷つける」から。恋人間のセックスが女性の無償労働になっているのです。
若年層の女性が「彼を繋ぎ止める」ために懸命な一方で、セックスに関心をもたない男性は増えています。日本家族計画協会が12年に行った調査によると、セックスに「関心がない」「嫌悪している」と答えた男性の割合は、20~24歳で24.6%で、2年前の調査より3.1ポイント増えています。実際、かつてあれほどみられた男子向けのセックス特集は、あまり目立たなくなった印象があります。
他人のためのセックスはときに苦しいものになります。10代から20代の「ギャル」に支持される「小悪魔アゲハ」という雑誌はセックス特集を一切しません。創刊編集長の中條寿子さんは「セックスで傷ついている女の子が多いから」と説明していました。
年配の女性がセックスを楽しみ、若年の女性がセックスに悩むなか、男性は概して未熟で単純だと感じます。30~40代の既婚男性が読む「SPA!」では「年下女子にいかにモテるか」が重要なテーマです。しかしその間に夫婦関係は冷え切ってしまう。定年後に「死ぬまでセックス」を目指しても、手遅れでしょうね。
1970年、神奈川県生まれ。女性向けセックストーイショップ「ラブピースクラブ」代表。著書に『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』『アンアンのセックスできれいになれた?』などがある。