私自身がいま意識していることは、「考える時間」と「聞く時間」をつくることです。社長業は部下からたびたび判断を求められます。サッカーでは、自分たちから動くのではなく、相手の動きに合わせて対応するプレースタイルを「リアクションサッカー」といいますが、そんな状況でした。組織のペースにあわせていると、それだけで1週間が埋まってしまう。これでは社長として生み出せる付加価値が少なすぎると思い、最近ではこちらから動いて予定を組むようにしています。自分がボールを持っている時間をつくるように意識しないと、「考える時間」は確保できません。
一方で、社長の仕事の半分以上は「聞く時間」です。このパフォーマンスをいかに高めるか。ひとつの工夫は「1対1」で話を聞くこと。新体制では「ワン・オン・ワン」という制度を導入しました。部下のいる上長は、週1回必ず、部下と1対1で30分間ミーティングをする。私を含む役員全員も参加しています。
毎週30分間を割くことは、無駄なコストに見えるかもしれませんが、職場で上司と部下が1対1で話す機会は意外とない。人間は機械のようには動かず、そこには感情が影響します。顔と名前が一致して、「この人は話を聞いてくれる」という関係があって初めて、チームワークで仕事ができると思います。
私が学ぶ、という側面もあります。ヤフーはポータルサイトからメールサービス、ネット通販、スマートフォンアプリなど、さまざまな事業を手がけていますが、創業社長の井上と違って、私には経験のない事業がいくつもある。この未経験の空白を埋めるために、できるだけ現場の声を聞くようにしています。
「聞く時間」のパフォーマンスを高めるためには、しっかり寝ることが重要です。睡眠不足の状態では、喋り続けることはできても、聞き続けることはできません。また仕事の話は、面白い話題ばかりでもないですし、ドラマチックなことがあるわけでもない。それでもじっくり聞かなければいけないので、寝ることが一番の仕事だと思って、7時間は睡眠に充てるように気をつけています。