――ソニー初の外国人トップ。日本と英米との働き方や時間の使い方の違いについてはどう感じているのだろうか。

少し違いがあると思います。日本のビジネスマンは比較的きっちりと時間を分けています。月曜日の朝8時とか9時から金曜日の夜11時ごろまで、たしかに長い時間働いていると思いますが、週末には仕事を離れて休みをとるのが普通ではないでしょうか。

ところがアメリカのビジネスマンは、週末にも仕事をしますし、深夜・早朝だろうと週末だろうと、お構いなしに仕事の電話をかけてきます。また、社交とビジネスの予定が連日目白押しです。これは週末にかかることがありますし、家族も無縁ではいられません。

――ソニーの企業イメージは日本と海外とでは大きく異なる。売り上げの7割を占める海外市場では、「グローバルなエンタテインメント企業」と見られている。ストリンガー氏が家族との時間を削ってまで世界中を飛び回るのは、海外でのブランド価値を意識しているからだ。

東京にいると、ソニーはローカルなエレクトロニクスの会社だと見られていますが、海外ではまったく違います。そしてソニーは日本国外での売り上げが7割に達する企業です。

ですから、私にとって重要なことは、「グローバル企業であるソニー」を代表するCEOなのだと見られることです。実際、海外拠点ではみんなが私の時間を奪い取ろうと必死になっています(笑)。その一方、日本ではメディアも役員も「もっと日本で時間を使ったらどうか」といいます。これは永遠の綱引きのようなもので、悩ましいかぎりです。

日本国内では、ソニーの競争相手というとパナソニックやサムスン、シャープ、東芝だと思われています。ところが外国に出ると、マイクロソフトやアップル、インテル、フォックス、ワーナーがライバルの列に加わります。

そこで私がソニーの役員たちによくいっているのは、「ヨーロッパやアジアなど全世界を見渡してみると、ソニーのブランドパワーは、みんなが思っている以上に大きい」ということです。つまり国内での競争ばかりに気をとられていてはいけないということです。