一流選手とパッティングのスコア差は15%
この研究で要となるのは「稼いだ打数」という新しい概念であり、この概念のおかげで、山のような1打ごとのデータと格闘し、これまで同じ土俵の上で扱われてこなかったさまざまなショット同士を比較できるようになった。
改めて、この指標について簡単に説明しておこう。過去のデータから平均スコアが4打とわかっているホールでティーショットを打ち、フェアウェイでホールアウトまでの平均打数が2.8打の地点にボールが止まったとすると、このティーショットでは1回のスイングでボールを1.2打分カップに近づけたことになる。1回のティーショットで平均的なティーショットに対して0.2打稼いでいるため、「稼いだ打数」は0.2打である。
20フィートのパットと3フィートのパットは、スコアカード上はどちらも同じ1打だが、「稼いだ打数」で測定すると20フィートのパットを決めたほうが良い成績ということになる。「稼いだ打数」はこうした直感に数値を割り当てるものだ。この指標の根底にはコンピュータ時代の幕開けに誕生した高等数学があるが、この本質は単に2つの数値の引き算であり、見事なほど単純である。
「稼いだ打数」を使ってこのデータを分析したところ、驚くべき事実がいくつも判明した。たとえば、一流選手と全体の平均スコアの差のうち、パッティングによるのは15%であることが、数学的に示されたのだ。一流選手が集まるPGAツアーのなかでも、パッティングの腕前には大きな差があることもわかった。ルーク・ドナルド、スティーブ・ストリッカー、ザック・ジョンソンは、稼いだスコアの約40%がパッティングによるものである。反対にロリー・マキロイ、アーニー・エルス、セルヒオ・ガルシア、アダム・スコットは、グリーンに乗せるまでに稼いだスコアをパッティングで若干失っている。
一流選手以外に目を向けても、驚くほどの規則性が見つかった。一流選手と平均的な選手、プロとアマチュア、初心者と上級者といった具合にゴルファーを2つに分けると、そのスコアの差のうちパッティングによるものは約15%だったのである。プロが「普段以上のプレー」をして試合で優勝したとき、パッティングが他のショットよりスコアアップに大きな役割を果たしているのは確かだが、パッティングがツアー選手並みにうまくなるだけでPGAツアーで常に優勝争いができるようになる平均スコア80のアマチュアゴルファーを見つけるのは、ユニコーンを生け捕りにするより難しいだろう。