シルバーを核にしたデザインで最も気を配ったのは、ビールらしさをどうやって出すかということ。スミ文字の中に赤をポイントで入れました。また、ビールの味をイメージさせる含みを出すため、「Asahi」というロゴには細い輪郭線を付け加えました。文字を囲む八角形のフレームとその内側にある細い線、上部にあるアーチを描く麦の穂でも、ビールらしさを表現しています。
パッケージをデザインするには、店頭で手がける商品が陳列されるところまで想像しなければなりません。その意味でもメタリックシルバーのビールは圧倒的な存在感があったのです。同時に、たくさんある他のビールと比べたときにも、五感に訴えるという革新性がありました。それは、お店で冷蔵されているシルバーの缶にうっすらと付く水滴が、キーンと冷えたイメージを想起させ、消費者の目に美味しそうに映るということ。こうしてやっと、斬新でありながらも共感を呼ぶストーリーは完結するのです。
累計34.4億箱! 1987年からシェア1位に君臨
1987年の発売から現在まで、ビール単独ブランドシェア1位。2014年より、「洗練されたクリアな味、辛口。」と表記を加えた。25年連続で年間販売数量1億箱突破、13年には累計34.4億箱を記録。 ※1箱は大びん633ml×20本換算。
(撮影:石橋素幸)
1952年、愛媛県生まれ。77年日本デザインセンター(NDC)に入社。トヨタ、ワコール、セイコー、アサヒビールなどを手がける。現在、ブランドデザイン研究所長。ブランディングを中心に、幅広い分野でデザインプロジェクトを指揮している。