CO2排出量の削減がコスト削減の決め手

10月16、17日の両日、アルカンターラはヴェネツィアのサン・セルヴォーロ島にあるヴェニス国際大学で、自動車分野のサスティナビリティに関する国際シンポジウムを開催した。そこに集ったのはドイツの自動車メーカーのアウディ、化学メーカーのBASFなどの企業幹部、フランスのケッジビジネススクールのフランク・フィッゲ教授、カルロス・ゴーン日産社長の母校であるパリのエコール・ポリテクニークからクリストフ・ミドレ氏などの有識者、さらに行政セクターからは世界銀行のワリッド・ロバート・ノリス氏……と、そうそうたる顔ぶれ。

ケッジビジネススクールのフランク・フィッゲ教授。

2日間にわたる基調講演と討論会で語られたのは、長期的視点に立てばCO2排出量の削減がコスト削減の決め手となり、雇用を増やす効果があるということ。アウディのウヴェ・コーザー博士は、「われわれは2011年から13年の3年間でクルマの製造にともなうCO2排出量を1台あたり910kgから613kgに削減した。その結果、コスト競争力は上がり、またグローバルはもちろん、インゴルシュタット(ドイツの本工場)でも雇用を増やすことができた」と実績をアピールした。

ケッジビジネススクールのフランク・フィッゲ教授は、BMW、ダイムラー、フォード、ヒュンダイなどいくつかの企業を引き合いに出し、リスク資本、売上高、CO2排出量、税引き前利益(EBIT)の相関関係をEBIT/Economic capital*Economic capital/CO2=EBIT/CO2、EBIT/Sales*Sales/CO2=EBIT/CO2といった関数で示し、低CO2であるほうがマーケットのニーズに合った商品を出すことができ、またコストロスが小さくなるという新しい経営モデルを提示した。

アルカンターラのポラーニョ会長はさらに、「自動車業界がサスティナビリティを実現するには、完成車メーカーだけでなく、新興国を含めたサプライチェーンも一定水準以上の低炭素、低資源、雇用環境を持つ必要がある。それが基準を満たした企業の製品にステッカーを付与するといった策も考えられる」と、サスティナビリティのグローバル化についても野心を見せる。