企業におけるサスティナビリティとは
サスティナビリティ――日本では“持続可能性”と訳されるこの言葉から、どのようなイメージを受けるだろうか。環境問題や資源・エネルギー問題を解決するため、企業やカスタマーが余分なコストを払って解決すべき課題という認識が一般的であろう。そのサスティナビリティについて、従来とはまったく異なるダイナミックな解釈、運用が欧州を起点に巻き起こりつつある。
「サスティナビリティは今後、企業が社会で必要とされる存在であり、競争力を持っていることを示す指標となるだろう。環境や資源・エネルギーだけではない雇用を生み、社会に貢献し、カスタマーに対してバリューのある商品を継続的に提供することこそが、企業におけるサスティナビリティだ」
プレミアムセグメントやスーパースポーツカーなど、付加価値の高いクルマの内装材の世界大手として知られる伊アルカンターラ社のアンドレア・ポラーニョ会長は言う。
「アルカンターラはイタリアの大手企業で初めてカーボンニュートラルを達成した。その経験に照らし合わせれば、カーボンニュートラルは長期的にみれば、必ずコスト削減につながる。今、われわれはサスティナビリティの数値化に取り組んでいる。企業の強さを表す数字として、アニュアルレポートに掲載されるものになり得ると考えている。難しい挑戦だが、必ずできると信じている」
一般にはコスト高になると信じられているカーボンニュートラルが、実はコスト削減や雇用創出、商品戦略にプラスに作用するという仮説。
「そのサスティナビリティを数値化するという近年のトライは、実は投資家、政府、非政府組織など、社会におけるさまざまなステークホルダーの要請を受けて行われるようになったものなんです。日本ではまだ一般的ではありませんが、欧州ではすでにいくつものアワードが生まれています」
欧州の自動車メーカー大手、ルノーとアライアンスを組み、欧州の政治・経済情報によく通じている日産自動車の幹部は、近年の事情についてこう語る。