世界でもめずらしい土の匂いがする企業

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世界で唯一「垂直統合モデル」の強み

「世界中を見渡せばトマトの加工品を供給する巨大企業は多くあります。しかし、品種開発から原料生産、加工、販売のすべてに関わっている企業は見当たらない。品種開発から事業を作り出せることがカゴメの強みです。トマトの消費量は全世界で毎年100万トンずつ増えています。これを追い風にしていきたい」

カゴメはポルトガルやオーストラリアなどに事務所を展開し、海外事業を行ってきた。近年では中国での生鮮事業も開始し、インドでは加工食品の新工場を建設している。昨年はアメリカのグローバル種苗企業「ユナイテッド・ジェネティクス」を子会社化。それぞれの地域や国に合った品種の開発を進めていく体制が整った。

「たとえばインドはこれからトマトの消費が増えると期待されています。経済発展をすると、加工品の需要が高まるからです。そのとき、我々には種子から販売までのバリューチェーンがある。インドの風土に適した品種を開発し、現地のニーズにあった加工品を提供する。将来的にはそうした取り組みを進めていきたい」

那須にあるカゴメの研究所を訪れると、寺田社長の語る「カゴメの強み」を実感することができる。研究所では近接する菜園で常に新たなトマトの品種が開発されている。年間500種の掛け合わせが試みられ、このうち1~2種が商品化へと繋がっているという。温室には南米で採取されたトマトの野生種も栽培されており、今でも品種改良の際に利用されている。

加工用トマトの「凛々子」、ベータカロテンが豊富で栄養成分表示を可能とした「オレンジまこちゃん」、リコピンの濃度を高めた「高リコピントマト」など、カゴメブランドのトマトは全てここで開発されてきた。農資源開発部の伊藤博孝は「消費者が求めるトマトを一直線に開発できることが、生鮮事業を今後拡大していく上での重要なポイントになる」と指摘した。

「育種から栽培、マーケティングや販売までをコントロールできるカゴメの研究所では、種を育てる農家向けではなく、消費者の方が食べたいと思うトマトの開発に専念することができる。私たちが思い描いている夢を、そのまま実現していくことができるんです」

カゴメは土の匂いがする企業だ――。取材の中である一人の社員は誇らしげに言った。その思いは世界でも稀有な「グローバルトマトカンパニー」を自負する彼らの原動力だろう。

(文中一部敬称略)

(遠藤素子=撮影)
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