東芝も西田厚聰氏が社長になってから大きく変わった。西田氏はイランにいた人で、傍流中の傍流のようなポジションを歩んでいたが、当時の岡村正社長が抜擢。非常に優秀な人物で、ウェスティングハウスの買収などを推し進め、東芝を変革した。いわば、強い経営者の下でこそ、会社は変わっていくのだ。それは保守本流の人たちではできないことだ。
バブル崩壊以降、20数年経つが、日本経済は基本的には成長していない。その中で成長しようと思ったら、ほかとは違うことをしなければならない。だが、違うことを実行するのは大変な作業で、腕力のある人でなければできない。そのためには強いリーダー、経営者が必要とされる。グローバル化と合わせて、この流れはさらに加速している。
大事なのは経営者としての柔軟性だ。「うちはこれでやってきたから、ずっとこれでやるんだ」と言っている会社は取り残されてしまうだろう。
その意味で面白い会社が三菱重工だ。最近では、仏アルストムの争奪戦でGEに敗退したが、オランド大統領にまで交渉を挑んだ。三菱重工の保守的体質を大きく変革し始めたのは大宮英明会長で、現在の宮永俊一社長にバトンタッチ。日立との火力発電の事業統合もやり遂げた。会社の力とは結局CEOの力なのだ。
これからの経営者にとって必要なものは3つある。1つが経営のスキル。ファイナンスの理論や、競争戦略、マーケティングの基本は経営者としての必須の素養だ。それから教養。最も大事なことは人を理解するということだ。歴史も文学も、人が対象であり、過去の失敗を学べる。結局、経営の要諦は、人を動かすことである。最後が経験だ。スキルにしろ、教養にしろ、実践して、失敗してみて「ああ、これじゃダメだ」と思うことが必要だ。失敗を経験し、能力はアップグレードしていく。
その意味で、今回の新浪氏の社長就任は新しいトレンドへの号砲である。第二、第三の新浪氏が出てくれば日本企業を変える原動力になる。