対象業務・職種は企業が勝手に決める
ところで年収ともう一つの要件である「職務の範囲が明確で高度の職業能力を有する労働者」だが、具体的にどんな人を指すのか曖昧だ。
厚生労働省サイドは金融のディーラーなど特定の専門家を想定しているが、審議会の経営側委員はこう要望している。
「専門的業務の中には、アクチュアリー(保険数理人)、与信判断業務、投資銀行業務、M&A業務、市場動向調査をはじめとする業務もあるほか、IT分野では技術の進歩も激しく、データサイエンティストなど様々な専門家も誕生している。対象業務については基本的に個別企業の労使に委ねて幅広く対象とする配慮が必要だ」
つまり、対象業務・職種は法令で決めるのではなく、企業独自に決めるようにするべきだというもの。年収を引き下げ、対象業務の拡大を求める経営側の要求が通れば、20~30代のホワイトカラーの残業代が消えてなくなることになる。
では、実際にはいくらの残業代をもらっているのだろうか。まず、計算にあたって月給と残業1時間当たりの割増賃金を知る必要がある。
月給は厚労省の「賃金構造基本統計調査」をもとに推計した大卒・男性の残業代を含まない30代の年齢別の平均月給(所定内賃金=産労総合研究所推計)。
次に2013年度のパートを除く一般労働者の法定内の月間平均労働時間は約155時間(毎月勤労統計調査)となっている。
この数字をもとに25%割増の1時間当たりの残業代を計算すると以下のようになる。
30歳 約28万円 2258円
31歳 約29万円 2338円
32歳 約30万円 2419円
33歳 約32万円 2580円
34歳 約34万円 2741円
35歳 約35万円 2822円
36歳 約37万円 2983円
37歳 約38万円 3064円
38歳 約40万円 3225円
39歳 約42万円 3387円