小宮コンサルタンツ代表取締役 小宮一慶氏が解説
新しい事業を始めようとするとき、前向きな人ほど、うまくいくシナリオを描くものだ。だからこそ時価総額2000億円の会社が3000億円の企業を買収するといった、一般には常識破りに見えるような行動に出たのだろう。
だが、ジフ・デービスやコムデックスの事業は、シナリオ通りには進まず財務状況は悪化し続けた。もしこのときに私が孫さんの傍にいて相談を受けていたら、「今、もう一度買収しようと考える事業ですか? 一番やりたい事業に集中したほうがいいのではありませんか?」と問いかけていただろう。
あるいは孫さんは、このとき同じようなことを自問したかもしれない。事実として、取り返しがつかなくなる前に撤退を決意し、インターネットに集中すべきと決断した。頭の切り替えが早い。
企業は新たな事業に挑戦し続けなければならない宿命があると同時に、やってみなければわからないことも多い。この例のように、失敗することで、今何に集中すべきかが見えてくることもある。
●正解【B】――より伸びる事業に注力するため、売却。短期間での株価の暴落は気にしない
※本記事は2010年9月29日に開催された「ソフトバンクアカデミア」での孫正義氏の特別講演をもとに構成されております。設問文等で一部補筆・改変したものがあります。