「心の問題」が「体の病気」に移行

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「睡眠障害」自己診断シート

「健康な人は眠る2時間くらい前からメラトニンという眠りを誘うホルモンが分泌され、副交感神経が優位になり、手足の血管が拡張して体の熱を逃がし、脳の温度が下がります。これと並行して、覚醒を維持する副腎皮質ホルモンの分泌が少なくなり、眠る準備が整う。ところが慢性不眠の人を調べてみると、夜間の脳の温度や覚醒ホルモンの分泌もなかなか落ちない。こうなるともとの不眠の原因が解決しても、体の覚醒度が高まっているため不眠は改善しにくくなります」

つまり最初はストレスなど「心の問題」だったのが、不眠が続くうちに「体の病気」に移行していってしまう。図は厚生労働省精神・神経疾患研究委託費研究班が作成した睡眠問題があるときの鑑別診断のフローチャート。これを参考にセルフチェックをし、該当するものがあれば医療機関を受診すべきだ。

「治療においては薬を使ってでも、とにかく眠るという経験をするのが大事。睡眠薬は必要なときに適切に使って、治ったら減薬・休薬するのが基本。実際、睡眠薬を服用した8割以上の人が1年以内に、7割が3カ月以内に治療が終わっています。特に新しいタイプの睡眠薬は依存リスクも少なく過剰に心配する必要はありません」

不眠は神経質になってもダメ、甘く見てもダメ。最新の知識をもとに、上手につきあってほしい。

国立精神・神経医療研究センター部長 三島和夫
ヒトの睡眠・体内時計の調節メカニズムや睡眠覚醒障害の病態生理と診断治療法の開発を専門とする、睡眠のスペシャリスト。不眠症の診療ガイドラインの作成や厚生労働省の研究班などのスタッフとしても活躍。著書に『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人共著)
(澁谷高晴=撮影)
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