ただし、訴訟に持ち込むかどうかは慎重に判断したい。岡田弁護士は言う。

「騒音被害に対する慰謝料の額は、15万~40万円が一般的な相場。弁護士費用を差し引くと、持ち出しになるケースが珍しくありません。また、慰謝料請求が認められても、差止請求が認められずに騒音が続く可能性がある。訴訟費用や実効性を考慮すると、自分で防音工事をしたほうが解決は早いかもしれません」

訴訟のメリットが少ないのは、賃貸の場合も同様だ。賃貸マンションでは、騒音の内容が受忍限度を超えており、かつ構造が一般的なマンションの水準に満たない場合は、大家に防音設備の設置を請求できる場合もある。しかし、大家を相手に訴訟を起こすより、引っ越すことを前提にして敷金の額や引っ越し費用の交渉をしたほうが現実的といえる。

一方、逆に近隣からクレームがきた場合は、どう対処すべきか。

「自分では通常の生活音と考えていても、相手にとっては不快な音かもしれない。まずはきちんと話を聞き、謝るべきときは謝るのが得策です」(岡田弁護士)

それでも相手が納得しなければ法的に解決を探ることになるが、怖いのは冒頭の事件のように暴行や脅迫に発展してしまうケースだ。

「身の危険を感じたら、なるべく早い段階で弁護士に相談したほうがいい。警察にパトロールの強化を頼むときも、弁護士同席のほうが効き目があります。また必要があれば、裁判所に面会禁止や接近禁止の仮処分を請求することもできます。いずれにしても騒音トラブルはお互い感情的になりやすいので、冷静に対処することが肝要です」(同)

(ライヴ・アート=図版作成)