男性の積極性を買う組織の莫大なコスト

公正さの問題を別にしても、組織が重要なプロジェクトの機会や昇進を、誰がそれを要求するかを主たる基準として分配したら、必然的に最も有能な女性のスキルを無駄にすることになる。男性のほうが女性よりこうした機会や見返りを要求する傾向が強いため、男性の大多数が女性の同僚より速く昇進し、最後には組織のトップの座を占めるわけだ。そうした男性の中には、取り残された女性の一部より資質も能力も劣っている者もいるはずだ。

女性の不利益が累積するとき、それは他の形で損失をもたらす。ある調査によると、社員の離職の理由で最も多いのは、自分のスキルが十分活用されていない、もしくは評価されていないと感じた、というものである。同僚男性のほうが目立つ仕事や大幅な昇給を与えられているのを目にしたら、女性は離職を決意するかもしれない。

社員に辞められたら本当に高くつくと、ジェネラル・ミルズの会長、スティーブ・サンガーは言う。「優れた人材の採用や育成に資金を投じてきた会社なら、彼らに辞められたくないはずだ」。時間給労働者の交代要員を採用、育成するには、平均でその労働者の年俸の50%の費用がかかり、専門職労働者の場合は、その労働者の年俸の150%の費用がかかる。採用コスト、採用業務を行う社員の機会コスト、および新たに採用した労働者が力をフルに発揮できるようになるまでの生産性の損失を合計すれば、ずいぶん大きな額になるのだ。

交代要員の採用・訓練が完了するまで、辞めた社員の穴埋めをしなければならない社員の士気の低下を計算に入れると、コストは一挙に増大する。われわれの試算では、離職コストは典型的な中規模企業の場合で、売り上げの3.4%、利益の実に45%にものぼることがあり、きわめて大きな影響を及ぼすという結果が出ている。