第2の理由として、国際的に見て、日本で自然エネルギーに取り組むのは猛烈に不利なことです。
自然エネルギーで必要なエネルギーをまかなえるかどうかは「自然の大きさ」と「人口密度」によって決まるからです。人口の少ない砂漠の国で太陽光発電をすれば、まかなえる可能性はあります。日本でも、もし四国の住人が1人だけならその人は自然エネルギーで暮らせるでしょうが、まったく現実的な話ではありません。日本の自然から得られるエネルギーは、私の計算では日本の消費量の5%がせいぜいでしょう。
日本で自然エネルギーを無理に推進すれば電力費が非常に高くなり、企業は国外に流出せざるをえなくなるでしょう。いまなら石炭火力を使うのがもっとも妥当です。
「石油や石炭は有限ではないか?」と思われる人がいるかもしれません。しかし、1970年代に「石油の寿命はあと38年」と言われましたが、現在は54年と言われ、枯渇するどころか寿命は延びています。なぜか。
「石油がなくなる」と騒げば、みんなが不安になり、原油価格を吊り上げることができます。いつの時代も「ない、ない」と言って、脅しているのにすぎません。
数億年前の生物の死骸である化石燃料は地下5000メートルにありますが、いま化石燃料を採っているのは地下数百メートルからです。そんな浅い位置にあるのは、温泉のように漏れてきたためで、ここにある量はおよそ500年分というのが専門家の一致した見方です。さらに地下5000メートルには化石燃料がたっぷりあり、それは現在の使い方では枯渇しません。
原子力がなくても、石炭火力発電所をつくれば景気はよくなる。資源の心配はなく、しかも安全。節電をする必要もないのです。
1943年、東京都出身。東大教養学部基礎科学科卒。工学博士。旭化成ウラン濃縮研究所所長、名大大学院教授などを経て現職。内閣府原子力安全委員も務めた。『原発事故とこの国の教育』『偽善エコロジー』など著書多数。