改憲を前提にした「フツウの国」への道

さて、安倍政権内でこうした動きの中核になっている人物がいる。現在の安倍首相の“側近”といわれ、首相補佐官も務めている礒崎陽輔・参議院議員である。

東大法学部を卒業後、キャリア官僚として旧自治省に入った礒崎氏は、第1次安倍政権下の2007年7月に実施された参院議員選挙に出馬して初当選した。現在は2期目。自治官僚出身の新進参院議員だが、安倍首相の信頼は極めて厚いようで、特定秘密保護法の立案を政権内で主導した上、日本版NSCを支える国家安全保障担当の首相補佐官への就任も内定している。

私は最近、その礒崎氏と日本版NSCや特定秘密保護法をテーマにテレビやラジオの討論番組で何度か議論を交わした。きわめて薄っぺらな似非国家主義者という印象しか受けなかったのだが、私の印象などはともかく、ラジオ番組での討論では安倍政権が目指す地平について礒崎氏本人から興味深い話を聞く機会があった。

以下、そのやりとりをできるだけ正確に紹介してみる。

――自民党の憲法改正草案っていうのも礒崎さんが中心になってつくられたそうですね。

「はい(うれしそうに笑う)。そうです」

――まずは特定秘密保護法を成立させ、近く武器輸出三原則も見直し、安倍さんの宿願だという集団的自衛権の行使を認め、さらには憲法改正を目指していくと。そのバックグラウンドを礒崎さんが作られているわけですよね。要するに礒崎さんは、日本を「戦後レジームからの脱却」という方向に大転換させていきたいと考えているんですか。

「それはね、フツウの国にしていきたいということなんです。決して右に行くとか戦争するとか、そんなことじゃありません。日本自身が、世界の国と伍していくのに、いまから世界の国と協力できるようにするためのシステムをつくっていこうと」

――つまり、礒崎さんのお考えだと、現行憲法はフツウの国にはふさわしくない憲法だと。

「うん。少なくとも、自衛権を明確に規定していないのはフツウの国とは少し違うと思いますね」

――今回の特定秘密保護法も、そして自民党の憲法改正草案も礒崎さんが中心になって作られたということで、最終的にいまの憲法はフツウの国に相応しくないと。そして礒崎さんが願っているフツウの国というのは、改憲までいかないとたどり着けないと。そういうことですか。

「それは自民党の結党以来の憲法改正の主張でありますから。それはもう、否定はいたしません」

(以上、TBSラジオ『荒川強啓・デイキャッチ』2013年12月11日放送分から)