礒崎氏が認める通り、衆参両院で多数を占めることになった安倍自民党政権は、日本版NSCや特定秘密保護法の成立を嚆矢として武器輸出三原則の見直しや集団的自衛権の行使容認、さらには憲法改正までを視野に入れて戦後日本の大転換を目指している。従って、その一過程である日本版NSCの効能や是非だけを論じてもあまり意味がない。では、こうした方向性を容認する立場を取るのか、それとも否を突きつける立場を取るのか。

礒崎氏をはじめとする安倍政権や自民党幹部の話を聞いていて明確に浮かんでくるのは、「民がいて国がある」という民主主義的な理念ではなく、「国があって民がいる」という発想にもとづく国家主義的、国権主義的な発想である。その内実は伝統的保守とも異なる幼稚さを孕んでおり、一部官僚の意のままに踊っている気配は濃厚なのだが、戦後日本が掲げ、守り続けてきた平和主義をかなぐり捨てる道であるのは間違いない。それはすなわち、国家主義的、国権主義的な色合いを強めつつ周辺国との緊張を高め、米軍とともに海外での紛争に積極関与していくものとなるだろう。

そうした近未来像を安倍政権は「積極的平和主義」(※2)と称し、“側近”である礒崎氏は「フツウの国」と表現した。これを容認するか否か。

私はどうなのかと尋ねられれば、断固として御免こうむりたい、と即答する。

※1:安倍政権は「国防の基本方針について」(1957年)に代わるものとして「国家安全保障戦略」を2013年12月に閣議決定した。このなかでは「社会的基盤の強化」の施策として「国民一人一人」が「我が国と郷土を愛する心を養う」とある。
※2:2013年9月、安倍首相は国連総会の一般討論演説で、「日本として、積極的平和主義の立場から、PKOを始め、国連の集団安全保障措置に対し、より一層積極的な参加ができるよう、私は図ってまいります。国連の活動にふさわしい人材を、我が国は、弛まず育てなくてはならないと考えます」と述べた。

ジャーナリスト 青木 理
慶應義塾大学文学部卒。1990年、共同通信社入社。大阪社会部、成田支局などを経て、東京社会部で警視庁の警備・公安担当記者を務める。ソウル特派員を経て、2006年からフリーランス。著書に『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』『絞首刑』『北朝鮮に潜入せよ』『日本の公安警察』などがある。
(撮影=門間新弥)
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