量販店のバックヤードからビールを運んできて売り場に陳列する。営業がそんな作業に時間が取られているとする。それが店舗担当者とのリレーションづくりになることも事実である。しかし、単純作業は専門のスタッフに任せればいい。店舗にとって本当に価値のある提案を考えるべきだ。中身の濃い仕事。それが本当の営業だと寺坂は力説する。
今年、ヱビス発売120周年という契機に、恵比寿ガーデンプレイスに「ヱビスビール記念館」をオープンさせ、広告宣伝費を注ぎ込んだ。しかし、やはり注目すべきは成長市場の第三のビールだ。
サッポロは気合を入れて業務用に踏み込んだ。禁断の実と言われた第三のビールの業務用。麦とホップの生である。なぜ禁断の実なのか。価格が安いため、業務店が導入に二の足を踏む。ありていに言って儲からない。さらに「廉価な第三のビールを店で出すのは……」というイメージも根強い。
ところが。そんな常識をいとも簡単にひっくり返す風雲児が現れた。居抜き物件の利用で設備投資のコストを抑え、店舗数と年商を飛躍的に伸ばしているエムグラントフードサービス社長の井戸実である。首都圏を中心に全国展開をして店舗を増やし続けるステーキハンバーグ&サラダバーの店「けん」で、麦とホップの業務用を出しているのだ。
「もともと黒ラベルが好きなんですけど、1050円のステーキセットに500円の生ビールだとどうしてもバランスが悪い。せっかくご飯食べ放題、サラダバーに美味しいカレーまで付いているセットなのに、ビールの値段がお得感を消してしまってはいけません。それで『麦とホップ』を導入しました。十分に美味しいし、中ジョッキ290円、小ジョッキ190円でお出しできますから」