世界における「日本製」は、われわれ日本人が想像している以上にプレステージが高い。麻生首相も日本製品に対する国際評価を認識したうえでのこの一言であったのであろう。

ともあれ、世界はブッシュで相当に笑ってきたわけだが、重要なことは、当のアメリカ人がブッシュネタを好んで口にしていた事実である。ブッシュネタに集約的に象徴されている一国主義的な、身勝手な自国の振る舞いを、国民自ら笑いのタネにすることは、ある意味でアメリカの健全性の証しだといえるだろう。

では、ブッシュの宿敵、サダム・フセイン時代のイラクのごとき独裁国家で、自国の独裁者をネタに笑うことは可能なのだろうか?

実は私は2002年、まさにフセインが独裁者として君臨していた時期にイラクを旅している。国境で検査と称して血液を抜かれたりして大変な目に遭ったが、さすがに街中でフセインをネタにしたジョークを収集することはできなかった。

ところが、移動のための車の中のような、他者の目のない場所になると、イラクの人々も重い口を開いてジョークを語り始めるのだった。代表的なのが「誰が助かった?」である。

■誰が助かった?

問い:フセイン大統領とアジズ副首相とサハフ情報相がいた宮殿に、
トマホークミサイルが落ちた。助かったのは誰か?
答え:イラク国民。

独裁国家でも、民衆はジョークを口にする。ソ連時代のロシアでも、アネクドートと呼ばれる政治ネタの小噺が地下で流行していた。脱北者の証言によれば、北朝鮮でも然り。ジョークは抑圧されている民衆のささやかな楽しみであり、はけ口であり、したたかな抵抗の印なのである。

※掲載のジョークは、早坂隆氏の著書『100万人が笑った!「世界のジョーク集」傑作選』『世界の日本人ジョーク集』所収のものに加え、同氏へのインタビューから編集。

(構成=山田清機)
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