今回の事例において、藤原氏が実践したのは、マンパワーのつながりを学校という枠の外に広げて探索するという、プレーヤーの軸に沿った展開だった。だがこれは、今回はそうだったという話であり、視点の転換にアクションの軸が有用でないということではない。
アクションの軸に沿った視点の転換については、マーケティング論の基本概念である「マーケティング・マイオピア」(詳細は拙著『マーケティング・コンセプトを問い直す』有斐閣、第4章)、あるいは、アクションのつながりを手段と目的の階層構造としてとらえ、上位目的へと遡ることで問題解決の袋小路を脱け出していく道筋を論じた、藤井聡氏の著作などを参照してほしい(『プラグマティズムの作法』技術評論社、49~68ページ)。
そして第2の局面が、新連結と再連結。つながっていなかったものを、いかにつなぐかが課題となる。この局面でも、プレーヤーとアクションの2つの軸に沿った展開がある。今回の事例でいえば、藤原氏は、枠を取り払うことで見いだした新たなプレーヤーを、他のプレーヤーたちとつなげるために、双方をウィン-ウィンの関係へと導いていた(プレーヤーの軸)。そして、そこから生まれる新しいアクションを、全体のゴールを見失わずに、ダイナミックな波状攻撃へと結びつけていた(アクションの軸)。
マーケティングには、バランス感覚に富んだ多面的な実践が欠かせない。リクルートもそうだった。アップルもそうだった。
めざましい成長をとげる高収益企業の行動原理には、つなげることの戦略性がある。それに比べると、学校の緑の手入れは、小さな課題である。しかし新しい状況を拓くには、つなげることの戦略性がこんなところにも欠かせないのだ。