「終わりのないゲーム」がユーザー拡大のカギ


客が“思わず買ってしまう”3カ条

私がユーザーの動向を見つめ、未来の新しい風景を同時に見据えようとするとき、重ねて意識していることがもう一つあります。それは、インターネットのサービスを考えるうえで重要な才能は、自分の使わないものをつくれるということ。新しいサービスをつくり上げていく過程で、決して自らの感覚を「ユーザーの中心」と考えないように心掛けています。

たとえ自分は使わなくても、その商品がどう使われるのか理解し、その利用者に向けてものをつくる。政治家でも何でもそうですが、自分が共感したり体験したりしないとわからないと言われてしまうと、そこから前に進むことはできませんから。

不特定多数の「ユーザー」をイメージする際、ありとあらゆるタイプの人が無差別にやってくる場所を思い浮かべます。例えば市役所や病院の待合室。18歳の女性がいる一方で、30代中盤のサラリーマンがいる。小さな子供たちがいれば、お年寄りがいる。「みんな」に使われるサービスを発想するためには、「みんな」という漠然としたイメージではなく、そうした一人ひとりの具体的な生活を想像することが大切。その人は何時に起きるのか、洋服はどこに買いにいくのかと考え、その中から求められているサービスの形を想像していくわけですね。

携帯電話のSNSといえば、これまでは10代、20代の若い世代のユーザーが中心でしたが、GREEでは全体の約4割を30代以上の会員が占めています。自分や自分の身近な人たちの興味・関心から一度離れること――。ユーザーの拡大にはこのことが重要だと考えています。

現在、当社では国内での会員数2000万~3000万人を目標に、あらたな開発を進めています。テーマにしているのは、オセロのような「終わりのないゲーム」をつくること。一度、クリアしてしまったらそれでおしまいというゲームはつくりたくない。第三者とSNSを通してコミュニケーションできるからこそ、そのゲームには終わりがなくなるのです。

ほかの人と同じことをやっていれば安心できるし、将来自分たちがどうなるかもある程度わかるけれど、それでは同じことしか起きません。ユニークなことや誰もやっていないことを始めるときは、やっぱり常に不安で孤独なのも確かです。でも、それは当たり前。自分のしていることが正解かどうかはひとまず置いて、不安であることが当然だと考えながら今後も新しいサービスを考えていくつもりです。

(稲泉 連=構成 大杉和広=撮影)