シニア層は栄養不足を本能的に感じている

そうしたなか、健康食品の販売などを行うサントリーウエルネス(株)があるレポートを発表している。50代~70代のシニア層(男女)約1万1000人を対象に調査を行った「シニア層の健康・生活意識調査レポート」※1がそれだ。

調査ではまず、シニア層のサプリメント・健康食品の摂取状況について聞いている。それによると、56.3%が摂取しており、さらに35.4%は毎日摂取していることが明らかになった(グラフ参照)。

この結果について、十分予想される範囲、とするのは吉備国際大学地域創成農学部の金沢和樹教授だ。「日本でサプリメントという言葉が一般に浸透し始めてから、すでに10年以上。シニア世代にとっても、それは当たり前の存在です。一方で、この世代は栄養の不足をある意味本能的に感じ取っている部分がある。例えば、現在販売されているピーマンのなかには、かつて露地栽培されていたものと比較して、ビタミンCを3分の1ほどしか含まないものがあります。栄養補給の基本は、あくまで日常の食事ですが、食品そのものの栄養価が減少傾向にあるなか、それを何かで補おうという意識が自然に働いているのではないかと思います」

金沢和樹●かなざわ・かずき
吉備国際大学地域創成農学部 教授
1949年生まれ。栄養化学者。京都大学大学院食品工学専攻を修了。神戸大学助教授、同大学教授などを経て、現職。「食べる」をテーマに「食の安全」や「食と健康」などの研究を行う。

さらに調査では、シニア層の「体力年齢」「気力年齢」に対する意識についてもアンケートをとっている。具体的には、“自分自身が考える、自分の体の年齢”を「体力年齢」とし、自己申告に基づく「体力年齢」と、回答者の実年齢との差を算出。「気力年齢」についても同様に、自己申告に基づく「気力年齢」と、回答者の実年齢との差を算出するというものだ。この結果がなかなか興味深い。

結果は、「体力年齢」では全体平均で実年齢より4.9歳、「気力年齢」では全体平均で実年齢より8.2歳若いと感じている──。多くのシニアが「自分は、体力も、気力も、しっかり持ち合わせている。年齢に負けていない」と実感しているのだ。加えて、なるほどと思わせるのは、下のグラフのとおり、年齢層が高くなるほど、「自分は若い」と感じている傾向が強まっていること。70代は、自分の「体力年齢」を実年齢より7.2歳若いと感じており、「気力年齢」では11.4歳も若いと感じているのである。

これについても、金沢教授は「理に適った結果」と言う。「人間の体の機能は、年齢とともに加速度的に衰えていくわけではない──。これは栄養化学の知見からもいえることです。むしろ60歳を過ぎた頃から、その衰えは非常に緩やかになる場合が多い。そのため実年齢を重ねるほどには、実感している体力年齢は高くならないのです」。さらに金沢教授は、「シニア層は自分の体をコントロールすることに習熟している」とも指摘する。これまでの経験のなかで、自分の体力や気力に不調を感じたときの対応などをしっかり身に付けていることが、ある面で若さの実感につながっているというわけだ。

さらに調査結果に戻ると、もう一つ注目しておきたい事実がある。それは、「体力年齢」と「気力年齢」のグラフがそれぞれよく似ていることからも分かるとおり、両者に相関関係があるということだ。事実、統計的な分析でも相関係数は0.61である。自らの体力を維持するには気力を充実させることが大切だし、気力が満ちていれば体力を保つことができる。これは誰もが直感していることだろうが、調査結果はそれを裏付けている。逆にいえば、体力か気力のどちらが衰えてしまえば、もう一方も衰えてしまう可能性が高いのである。

※1 調査会社:(株)インテージ。対象人数:50代~70代の男女1万1251名。調査方法:インターネット調査。調査期間:2013年4月9日~4月14日。