大切なのは計算力より思考力だという反論もあるでしょう。しかし、計算が得意な子は1つの解法を試してダメだったときに、すぐ別の解法を試そうとします。ところが計算が苦手な子は試行錯誤を面倒に感じて、次の一手になかなか移れません。当然そこで思考も途切れてしまいます。計算力があるからこそ、思考力も伸びていくのです。

医学部合格者数日本一の東海中学校・高校の中学入試問題

また、計算力は訓練を重ねれば着実に身につきますので、中高生に比べて時間の余裕がある小学生のうちに、しっかりと補強しておきたいものです。

難しい文章題や図形の問題は解けるのに、計算ミスをしてばかりいる子がときどきいますが、うっかりミスだからとそのままにしておくといつまでも直らないので、ドリルなどで毎日練習させたほうがよいでしょう。

とくに小数・分数の計算では誤答率が高くなりがちです。長い計算などで、最初の計算で出た答えを利用して2段階、3段階と計算を重ねる問題の場合、1つでも間違えれば正答できません。複雑な計算や、小数・分数はとくに留意して強化を心がけましょう。

ドリルをやるときはノーミスで正答できるのはもちろん、記載されている制限時間を2割短縮するのを目標としたいものです。入試では、ちょっとした計算ミスが大きな痛手になるという理由もありますが、それ以上に人の命を預かる医師という仕事にミスは許されず、スピードも求められることを、子供のうちから実感しておいてほしいのです。

また、私は医学部を目指す子に対して、中学受験をしなくても、小学校で習うすべての計算を5年生の終盤までに習得し、6年生になったら中学入試レベルの難易度の高い問題にチャレンジすることを勧めています。

学校の授業を先回りすることになりますが、仕組みがわかれば自分で先に進めるのが計算問題の良さなので、小学校時代の計算の総仕上げとしてやってみる価値はあるでしょう。

次回(10月20日更新予定)は「読解力」について解説します。

和田秀樹
精神科医。東京大学医学部卒業。診療を続ける一方、著書『受験は要領』がベストセラーとなって以来、受験指導の権威としても知られる“受験の神様”。
(石田純子=構成)
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