「たった1%」を印象付ける法

たとえば、今はたった1%にすぎない市場占有率をこんな風に伝えることで、無限の可能性を感じさせる表現に変えている。

「1%の市場占有で、1000万台の電話を売ることになる」(*2)

たった1%にすぎないのに、その母体となるマーケットが大きければ1%でも1000万台。つまりその100倍のマーケットが存在することになるから、このマーケットに切り込んでいく意義が大きいことを感じさせるだろう。意図的に小さな数字からはじめ、大きく広がりを感じさせた例である。次は、iPhone3Gが発売されたときの有名なフレーズだ。

「iPhone 3G。速度は2倍、価格は半分」

速度の数値や価格を伝えたとしても、比較対象がないと聞き手はピンとはきにくいだろう。そこで、ジョブズはスピードが従来の2倍になり、価格は2分の1であると、どんな聞き手でも「これは自分にとって得である」「スゴイ」といった感覚を、ゴロ感・音感もよく、キャッチフレーズとして記憶に残りやすい表現で伝えている。

ジョブズの話がおもしろいのは、本来は自分たちにしか意味のない数字を、いかに聞き手の生活の中で、聞き手の役に立つかを実感させる単位に置き換えてくれるところにある。数字を聞き手の身のまわりの単位に置き換えることで、より価値のあるものにしていくのだ。自分たちだけに意味がある数字をそのまま伝えるのではなく、相手にうったえかける数字や単位にすることが大切なのである。