国内一辺倒に危機感を覚えているのは、資産の運用・管理についても同様です。ビリオネアは、ファミリーの存続のため、何代も前から資産を海外にリスク分散し、イザというときは日本の外に出ても暮らせるように備えています。世界中に家族が散っている華僑と発想は同じです。資産形成では、株やファンドにハイリターン志向でアグレッシブに投資するミリオネアと異なり、ビリオネアは守り中心。債券の比率の高いポートフォリオが特徴です。

ただ、総資産の中で不動産の占める率が圧倒的に高いので、日本の相続税が高いからといって安易に海外へは逃げられません。震災以降、海外への移住、事業進出に関する問い合わせは増えていますが、実際に移住するのは30~40代のIT企業社長など比較的若いミリオネアの方々が多いようです。

財政難にある今の日本では、お金持ちにより多くの税金を掛けようという風潮があります。“鎖”に繋がれたままのビリオネアにとってこれは大きな逆風となり、今後予想される相続税の課税強化を心配される方も増えています。

こうしたビリオネアとビジネスで付き合っていくためには、何が必要なのでしょうか。

多くのビリオネアは、周囲に弁護士や会計事務所など既得権益化したネットワークがすでに存在し、新たに入り込みづらい。しかも、常日頃から売り込まれ「慣れて」います。売り込みは基本的に嫌がるので、近づくのは難しく、時間もかかります。

そんな彼らと付き合っていくためには、プライベートバンク顔負けの「御用聞き営業」が必要です。自分のメリットとすぐには結びつかないが、この人のために何ができるのか、どうしたら貢献できるのかを徹底的に考え抜き、それを本気で実行できるコンマ数%の人が初めて接点を得ることができます。

ビリオネアを相手とするビジネスは、ハードルは高いですが、一度入り込めれば、後はコミュニティの中で次々と新たなビジネスをつくり上げる面白みがあります。ビリオネアビジネスは、究極のワントゥーワンビジネスであり、これを知ることが、ビジネスの真髄を知ることにつながり、今後、多くのビジネスの活性化にも役立つのではと考えています。

船井総合研究所 富裕層ビジネス研究会主宰 小林昇太郎
立教大学大学院修了(経営管理学修士)。大手商社、非鉄金属メーカーを経て船井総合研究所に入社、経営コンサルタントとして活躍。2009年4月「富裕層ビジネス研究会」を立ち上げる。同会には国内だけでなく東南アジア、香港、中東など海外からの入会も多く、複数の新規事業を実現。著書に『ビリオネアビジネスの極意』『絶対に断れない営業提案』(共著)など。
(構成=西川修一 撮影=向井 渉)
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