「世界幸福度報告書」が持つ問題
この質問は「キャントリルのはしご」と呼ばれ、複数の幸福研究で使われてきた定番の指標だ。といっても、この答えだけが用いられることは少なく、通常は「健康寿命」や「経済レベル」といった他の尺度と組み合わせて総合的な分析を行う。しかし、「世界幸福度報告書」は、たんに一問一答の平均点を並べただけで世界ランキングを作っている。レポートのなかには、他にも1人あたりGDPや健康寿命、自由度といった他の指標も掲載されているが、これらの要素はランキングとの相関を分析するために使われ、幸福度スコアに加算されるわけではない。
この時点で、レポートの信憑性には疑念がわくだろう。まず問題なのは、“はしご”というメタファーが、回答者の思考にバイアスをかけてしまう点だ。一般に“はしご”は上にのぼるための道具としてのイメージが強いため、「上に向かう=社会での成功」といった連想が働きやすい。結果として、無意識のうちに、人生の満足度よりも“社会的成功”が評価の基準になってしまう。
ここから先は無料会員限定です。
無料会員登録で今すぐ全文が読めます。
プレジデントオンライン無料会員の4つの特典
- 30秒で世の中の話題と動きがチェックできる限定メルマガ配信
- 約5万本の無料会員記事が閲覧可能
- 記事を印刷して資料やアーカイブとして利用可能
- 記事をブックマーク可能
