さらに守島氏は東日本大震災との関連も指摘する。
「地震や津波によって一瞬ですべてを失ってしまう現実を目の当たりにした私たちは、自分が立っている土台の脆さを痛感しました。その結果、安心・安全志向が強くなり、『身を守るためにはお金が必要』『信用できるのはお金だけ』という発想にいたったのだと思います」
お金に対するこだわりは、転職の条件にも表れている。転職する際、会社を選ぶ条件として「給料」と回答した人が「仕事自体のおもしろさ」や「職場の雰囲気」等から抜きん出ていた。
堅固だと思っていた土台――家や土地にとどまらず、雇用や人間環境も含めたセーフティネットが実は壊れやすいものと知ったとき、守りの境地に達する気持ちは理解に難くないだろう。
「働きがい」に関する質問では、半数弱が「現在の会社で働きがいを感じる」と回答している。この比率は、一般社員(非コア社員)→課長クラス→部長・次長クラス→経営者・役員と役職が上がるにつれ上昇していくのも特徴的だ。
「会社の将来に悲観し、自分の未来を賭けたくないと考えている人が多い中で一見矛盾した結果のようですが、そんなことはありません。将来への不安はあるけれど、転職、起業などして現状を打破する積極性もない。そこそこにやれているのでいまの仕事はポジティブに評価する――そんな心境の表れであり、やはり働く人たちの閉塞感が読み取れます」