セブン&アイ・ホールディングスへの買収提案をしていたカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールが、提案を撤回したことを発表した。この状況をどう見ればいいのか。流通アナリストの中井彰人さんは「敵対的買収について問われると考えていないと答えているが、それは今すぐにはしないという意味だ。セブンの北米事業の上場が実現した後に、この件が再始動してもおかしくはない」という――。
写真左=モントリオールのクシュタール・コンビニエンスストア、写真右=セブン-イレブン看板
写真左=モントリオールのクシュタール・コンビニエンスストア(写真=Beltz/PD-self/Wikimedia Commons)写真右=セブン-イレブン看板(写真=トレインファン/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

カナダACTがセブンへの買収提案を撤回

2025年7月17日(日本時間)、北米のコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール社(カナダ 以下、ACT)が、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン)への買収提案を撤回したことを発表した。世界トップシェア、北米でもトップシェアを持つセブンに北米2位のシェアを持つACTが買収を提案した案件であるが、企業価値ではセブンをはるかに上回るグローバル企業に、日本を代表する小売大手が買収される、というこれまでにない話に、日本国内ではかなり大きな話題となっていたことはご存じであろう。

ACTはセブンとの協議に基づいて買収を提案していく方針を明らかにして、既にACTとセブンとの間では交渉も行われていたのだが、双方の話が折り合わず、ACTとしては建設的な協議の欠如を理由に撤回するのだと説明された。これに対して、セブン側は協議の合意を目指して、誠実かつ建設的な協議を行ってきた、と反論しており、双方の主張は食い違っている。撤回を踏まえて、セブンは、単独での価値創造の施策を今後も継続して遂行していく、としている。この状態をどのように理解すればいいのだろうか。

市場が求めていたのは「北米コンビニを中心にした買収」

報道によれば、セブンとの交渉が長引いた結果、ACTの業績も北米セブン同様、芳しくなく、同社の株価は年初から14%ほど下落していたという状況にあり、それも撤回の要因となったとされる。実際、この撤回の発表後、ACTの株価は一時18%以上上昇、買収資金が自社株買いにまわるとして好感された、のだという。

ACTの株価はセブンの買収提案公表後、大きく下落し、その後は一時持ち直しながらもじりじりと右肩下がりで推移していたのだが、それはセブンを丸ごと買収することの非効率を市場が嫌ったということと解釈していた。その想定だと、セブンの非コンビニ事業を切り離し、そしてさらには投資効率、シナジーも高いと考えられる北米コンビニを中心とした買収にすることが、市場に求められていたという解釈もできる、ということだ。個人的にはそうした話だと思っているので、その趣旨にそって、以下、私見を書き留めてみた。