4階には「実験に使う人間」が収容されていた

44年夏に同じく衛生兵として栄部隊に入隊した松本博は「南京でもやっていた人体実験」(同右所収)でこう述べる。

「入隊後私は部隊本部内にある七号棟の建物に連れていかれました。コンクリート造りの四階建ての建物でした。そのとき私に言い渡された仕事は、“マルタ”の監視だったのです」

証言のなかの「七号棟」は、おそらくとべの言う「七棟」であろう。そうであれば、この建物の階段を上ると人体実験の被験者である「マルタ」を収容する部屋があったと思われる。警備を厳しくして立ち入りを制限していたのはそのためだったのだ。

松本によると、4階にあったその部屋は、学校の教室ほどの広さで、その中に「ロツ」(中国語で籠を表す籠子〔ロンズ〕のことか)と呼ばれた檻が5、6個あった。その中には全裸の中国人男性が一人ずつ入れられていた。彼らは憲兵によって連行されてきた捕虜だ。