平時でも自衛官は尊い命を危険にさらしている

これが私にとって初めての遺体回収任務だった。バラバラになった肉片をひしゃくですくってバケツに入れていく。しばらく食事も摂れなくなった。私より若い隊員は救命ボートの上で嘔吐していた。

私にとって、唯一救いだったのは、回収した帽子や身分証明書のケースを航空自衛隊がご遺族に届けたときに、一番つらいはずのご遺族から感謝の言葉をいただいたと聞いたときだった。ただし、こういうことを何度もやっていると、自衛官としての宿命を感じざるを得ない。人の命はなんとはかないことか。自衛官の命が失われるのは有事だけではない。平時でも自衛官は尊い命を危険にさらしている。私が若かったころは自衛隊に対する国民の理解もなかった。それでも俺たちはやらなければならないのだ。