大きな改革はすぐに行わない

ほとんどの会社で、昇進を発表するのは当人とは別の人間の仕事である。「公式の人事異動の手順がしっかりしている組織なら、今後は誰が監督権者かを人々はきちんと認識するだろう」と、ワトキンスは言う。

だが、必ずしもすべての組織がしっかりした手順を備えているわけではない。これはすなわち、その仕事が当の本人の肩にふりかかるかもしれないということだ。もちろん、「私が新しい上司です」という件名の電子メールを送ったりしてはならない。だが、異動や就任について全員に知らせることは大切だ。どのようにそれを行えばよいかを、現在の自分の上司や人事部に相談しよう。

新任管理職はチームをどのように指揮するかについて、おそらくたくさんのアイデアを持っているだろう。だが、大きな改革を直ちに導入してはならない。部下の感情を害したり関係を損なったりせずに自分の新しい権限を知らしめる必要がある。

「ちょっとした綱渡りをしているようなものだ」と、ワトキンスは言う。「アレクサンダー・ヘイグ(元米国国務長官)ばりの威圧的な姿勢で乗り込んではならないし、完全に対等な者として振る舞ってもいけない」。

まずはテキパキと決められるような2、3の小さな課題を見きわめることだ。もっと大きな問題については十分な情報を集められるまで先送りするべきだと、彼は言う。たとえば、チーム・ミーティングや個々のメンバーとのミーティングのスケジュールを新たに決めてもよいだろうし、チームのコミュニケーションのとり方について自分の期待していることを説明してもよいだろう。

自分が監督権者であることを知らしめるということは、新たに手にした権限をひけらかすという意味ではない。そんなことをするのではなく、自分の信用を確立し、自分が上司としてどのように仕事をしていくつもりかを示す行動をとろう。

最善の方法の1つは、チーム全体とも個々のメンバーともミーティングを行って、自分のビジョンについて語ることだ。

「リーダーシップについての自分の考え方や、自分はチームをどのように指揮するつもりかを語るのはオーケーだ」と、ワトキンスは言う。「ただし、それは過去のその人の指揮ぶりから人々が得ている印象と一致していなくてはいけない」。