こうした仮説思考によるBCG流の問題解決の思考法を、売り上げの伸び悩みに頭を痛めるクライアントを例にして、秋里氏に紹介してもらうとこうなる。
まずキーマンにヒアリングを行って“土地勘”を掴み、「競合が多く市場が飽和していて新たな打ち手が必要」という仮説を立ててしまう。その観点から現状を分析すると、「原材料の調達面は強いものの、商品力が弱い。また海外で急成長している同じようなビジネスモデルがいくつもある」ことなどがわかってきた。そこで「原材料の調達面の強みを生かしながら、海外のモデルを取り入れて新市場を開拓する」という具体的な仮説が導き出されるというわけだ。
もっとも、そうやって立てた仮説だが、最初の段階では間違っていることが多い。この事例でも同じようなビジネスモデルで失敗したケースを見落としている可能性がある。しかし、間違えた理由を考えることで“勘所”が掴め、次には確度の高い仮説に近づける。もちろん、最終的にクライアントに提案される内容には詳細な検証が加えられる。
また、そのようにコンサルティングの場数を踏んでいくうちに、さまざまなケースに触れることで、「この業界で売り上げダウンに苦しむ原因の多くはこういう点にあり、その有効な解決策はこれだ」ということがわかるようになってくる。ケースごとの原因と解決策がパターンとして認識され蓄積されていくからだ。その結果、ベテランになるほど実際の解決策に近い“いい筋の仮説”を瞬時に立てられるようになるのだ。
また、BCGのなかでよく交わされる言葉の1つに「右脳と左脳」があるそうだ。右脳は直観や創造性、イメージなどの機能を、もう一方の左脳は言語、論理的思考、計算処理などの機能を司っている。その左脳の論理的思考をベースにしながら、右脳の直観を生かせということを意味している。新人にも「それで仮説は」と問うのは、右脳の働きを常に高めておくようにトレーニングを課す意味が込められているのかもしれない。
1998年、東京大学大学院工学系研究科情報工学修了後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。Eコマースグループのコアメンバーとして活躍。2000年6月にオイシックスを設立して現職。
USEN代表取締役社長 中村史朗
1994年、東京大学卒業後、三菱商事に入社。2004年ダートマス大学タック経営大学院を修了し、ボストンコンサルティンググループ入社。レックスHD取締役などを経て、10年より現職。
ロコンド代表取締役会長 秋里英寿
京都大学工学部卒業。東京大学大学院理学系物理学科修了。ボストンコンサルティンググループでプロジェクトマネージャーを務める。EXA Partners代表を経て現職。
ロコンド代表取締役社長 田中裕輔
2003年、一橋大学経済学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。07年、26歳で同社史上最年少マネージャーに就任。米国でのナローアース社を創業・売却を経て現職。