そもそもBRICSペイの構想は、ルラ大統領とプーチン大統領が提唱したものだ。ただしルラ大統領が、実質的に人民元の信用力を基にした共通通貨を志向した一方で、プーチン大統領は金本位制に基づく共通通貨を提唱するなど、足並みはバラバラだった。それにプーチン大統領の場合、暗号資産の利用まで呼び掛けるなど、発言が二転三転する。

このような曖昧な構想に、中国が乗り気となるわけがない。中国は中国で、自らの望むテンポで人民元の国際化、つまりハードカレンシー化を図ればいいだけだ。ここでよく誤解されるのが、デジタル人民元の存在である。デジタル人民元が普及すれば、人民元通貨圏が拡大し、人民元の国際化が促されるという論者がいるが、本当だろうか。

そうした論者のうち少なからずの人が、デジタル人民元の性質を誤解している。中国人民銀行が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元は、現在、中国国内で利用に向けた実証実験が進められている。しかし中国自身が、資本逃避の加速を恐れて、デジタル人民元の発行や利用に慎重であることは見逃されがちな事実だ。