年収800万円以上アッパー・ミドルの家計が急速に悪化している。このままだと彼らの行き着く先はいったいどこになるのか?

固定費も見直し、やりくり費をどんなに切り詰めても、目標の貯蓄額を捻り出すことができない人もいるはず。ましてや勤め先でリストラにあって失職し、日々の生活費に事欠くことだってありえる。そこで起死回生の家計立て直し策として考えられるのが、都会暮らしをやめて地方に「Iターン」「Uターン」をし、生活のすべてをリセットしてしまうことである。

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図表4 地価公示で見た東京と地方の格差

まず住宅の問題であるが、地方は土地の値段が安い。図表4を見てもわかるように、公示地価は東京の都区部を1とすると、札幌0.125、新潟0.126、富山0.093、松江0.129、高松0.131、熊本0.137と軒並み5分の1以下の水準だ。家族4人が十分に暮らしていけるだけの広さのある戸建ての中古住宅なら、1000万円も出せば購入が可能だろう。

自動車だって田舎暮らしなら外車なんて不要だ。以前、田舎に住む金持ちの人から「ベンツを買ったものの、近所のやっかみを恐れて隣町にガレージを借り、そこまで国産車で行って乗り換えてドライブを楽しんでいる」と聞いたことがある。もちろん、すべてをリセットしようとするわけであるから、そんな余計なことはしなくて結構。国産車、それも税金が安いうえに燃費がよくて維持費がかからない軽自動車に乗り換えよう。それなら周囲にすぐに同化することができるはずだ。

教育の問題だって、「お父さんの仕事の関係でどうしても田舎に行かなければいけない」と諭してあげれば、子どもも納得しやすい。それに「あの家庭はリストラで学費が払えなくなったから転校した」などと変な後ろ指を指されなくて済む。なにより地方の教育でいい点は公立学校の教育が生きていることだ。学費が安いうえに一流大学への進学率も高く、安心して子どもを通わせられる。

そうした3拍子揃った地方の1つが福井県である。09年の1世帯当たりの貯蓄額(預貯金現在高)は全国平均の937万円を上回る1086万円で全国第7位。08年時点での持ち家の広さは172.6平方メートルで同2位。失業率は10年の平均で3.3%で全国で2番目の低さで雇用も安定している。また11年春の県内高校の東京大学への進学実績を見ると、藤島、武生、若狭などほとんど公立高校で占められている。