なぜ私たちは「生成AI」を神のように崇めてしまうのか。哲学、歴史学、文化人類学、美術史など人文科学に基づくコンサルティングを行うマスビアウ氏に聞いた――。
クリスチャン・マスビアウ
クリスチャン・マスビアウ
デンマーク出身。コペンハーゲンとロンドンで哲学、政治学を専攻。2005年にデンマークで戦略コンサルティング会社ReDアソシエーツを創業。同社は文化人類学、社会学、歴史学、哲学の専門家を揃え、人間科学を基盤としたコンサルティングを行う。著書に『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』『心眼 あなたは見ているようで見ていない』(ともにプレジデント社)など。

なぜ選挙の勝敗予想はいつも外れるのか

「人々は物事を見ていない」。私がそう気づいたのは、大学院で文化人類学や哲学を学び、学者を目指していたときでした。孤独な研究生活に限界を感じていた私は、研究で学んだ「観察」のスキルを、大学よりも広い世界で応用できないか考えるようになりました。

企業経営に軸足を移してからは、20年以上にわたって世界中のプロジェクトに携わり、観察力を生かして経営者たちを支えてきました。観察する対象は、病院に通う患者から自動車のユーザーまで多岐にわたります。企業が顧客の行動について知りたい場合、ただオフィスの椅子に座って数字を眺めているだけでは、経営判断を誤ってしまう。誰もがAIに頼る時代になりましたが、「観察」こそが、新たな発想や発明を生む方法なのです。