7月3日は参院選の公示日だ。わたしたちはどうやって投票先を決めればいいのか。25年にわたって選挙取材を続けてきたフリーライターの畠山理仁さんは「ネットの編集された情報だけで『わかった気になってしまう』ことは危ない。複数の候補者の主張を直接聞き比べて、大切な1票を投じてほしい」という――。(取材・構成=フリーライター・山川徹 後編/全2回)
「自由の場」を悪用したいまの選挙
(前編から続く)
――昨今、選挙ではヘイトスピーチや陰謀論、デマが横行しています。現状をどうご覧になっていますか?
本来、選挙は自分の考えや主張を自由に発言できる場です。ぼくは、その自由な場に惹かれて、25年も選挙取材を続けてきました。そうした場を悪用して、差別発言やヘイトスピーチを繰り返す候補者が増えたことはとても憂慮すべき事態です。
選挙は楽しい。ぼくは、ずっとそう言い続けてきましたが、選挙の現場で差別発言やヘイトスピーチに遭遇すると取材後も気分が落ち込みます。当事者でないぼくですらそうなのですから、ヘイトスピーチのターゲットになった人や、マイノリティの当事者たちは、外を歩くのを躊躇するほどの恐怖を感じているはずです。
政治家の発言にも「デマ」はある
選挙演説で、頻繁に耳にするデマの1つに「外国人に生活保護費が1200億円も支払われている」という言説があります。これは自民党の片山さつきさんの発言が基になっていますが、根拠はありません。統計も取っていない。
公職を目指す者として、候補者は社会の分断を煽るような発言は慎むべきですし、取材する側も当然、指摘し、批判すべきです。しかし外からその議論を見ている人は、選挙を争いの場として受け止めてしまう。その結果、有権者を選挙活動の場や、投票所から遠ざけてしまっているのではないかと感じます。


