友森さんは、週6日は犬のトリマーとして自分の店で働き、愛護団体の活動は休みの日に行っている。「この人がやっていることの金銭的価値ってすごい額になる」と糸井さんが言うのは休みの日の“仕事”のほうだ。融資も受けず、税金も使わずに個人でこれだけのことをやっている人がいるということ、しかもそれはいわゆる本業とは別の仕事であるということを考えると、ほんとうに「仕事ってなんだろう」と考えてしまう。就職しなくてもできる仕事もあるし、やっているうちに形になっていく仕事もある。

「はたらきたい展。」の“99の「はたらく人」のことば”コーナー。「アイデアとは」「何かで迷ったときには」「飽きられたら」「失敗の山のなかから」「誰でもできるような仕事を与えられたら」「『奴隷労働的』になってしまう人は」……など、はっとする「上の句」の裏に「下の句」の書かれた99枚のカード。お持ち帰り可能です。

最初の話に戻ると、糸井さんは「ほぼ日」はひとつの節目にきていると言った。「俺もいつまでもいないしね」という思いもある。「はたらきたい展。」のなかに次のステージへのヒントがあるように思った。単なるお金儲けではなく、ある目的のためにお金を持続的にまわしていく仕組み。人やアイデアとお金をうまくマッチングする仕組み。「はたらきたい展。」の「東北の仕事論」のコーナーでは、被災企業の経営者たちを取材した「ほぼ日」の「ゼロから立ち上がる会社に学ぶ東北の仕事(http://www.1101.com/tohoku_shigoto/archive/index.html)の記事が展示されている。被災地ほど「人、アイデア」の価値が実感されるところもないだろう。やるしかないからやっている。やむにやまれずやってみる。やりたいだけでやっている。そうやって動きだしたところに自然と人とお金が集まって、仕事が生成されていくという現象が今、至るところで起きている。

「働き方」の選択肢は確実に増えている。でもそれは、どこかにあらゆる働き方を網羅したカタログがあってそこから選べばいいというような話ではない。結局、理想の職場や、自分らしい働き方は、自分で体を張って見つけていくしかないのである。何かやっているうちに気がついたらそれが仕事になっていた……面白い働き方、すごい働き方をしている人たちは、みんなそんな感じだったのではないだろうか。

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