「大前さんに会って謎を解こう」

1998年に24時間放送「ビジネス・ブレークスルー・チャンネル」の委託事業者としてスタートしたBBTは、教育事業のノウハウを蓄積していく。2001年5月にオーストラリアのボンド大学MBA(経営学修士)プログラムを開講、10月には経営管理者育成プログラム「本質的問題発見コース」を開講。翌年から「大前経営塾」が開講し、インターネット上の遠隔学習システム「エアキャンパス」が使われ始める。「どう『ヤバい』のか」を知りたいと考えた大原さんは、2004年8月から「本質的問題発見コース」の受講生となっていた。

「大前さんの本のうしろのほうに『本質的問題発見コース』の募集告知が載っていて、それで申し込みました。受講しているうちに、年が明けてすぐBBTから『4月から大学院を始めます』と案内が来たんです。こんなに短期間でちゃんとしたものができるのかとも思いましたよ。3カ月もないんですから。でも、飛び込もう、と」

株式会社立、物理的なキャンパスがない初物づくしの大学院。そこに「飛び込もう」と思うちょっとしたきっかけが大原さんにはあった。

「この年の3月に、長嶋茂雄さんが脳梗塞で倒れているんですよ。あれだけの超人でも倒れることがあるんだ、と。オンラインの大学院、多少の不備はあるかもしれないけれど、今、会えるチャンスがあるときに大前さんに会って、まったくわからなかった『新・資本論』の謎を解こうと思ったんです」

大原さんは、長嶋茂雄と大前さんの誕生日が1日違いだということを知っていた。長嶋茂雄(1936年生まれ)の誕生日は2月20日。大前さん(1943年生まれ)は2月21日(余談だが、長嶋茂雄と同じ誕生日で大前さんと同い年生まれの人物にアントニオ猪木がいる)。

「早稲田、慶應、一橋、その他いろいろビジネススクールはすでにありましたけれど、当時は月1回のペースで中国にも出張していましたし、通う時間なんかありません。ほかは比較対象にもならなかった。ここまで大前さんの本を読んで勉強してきて、『自分で考えるしかないんだ』ということはわかっていました。自分なりに勘は悪くないと思います。ただ、まだアクションに繋げるところまで行っていなかった」

そして大原さんはアクションを起こし、BBT大学院の一期生となった。