「誰に会ってもビビらなくなりました」

2005年4月、BBT大学院が開校する。オンラインの大学院だが、節目節目でオフラインのイベントや、学生たちと教授陣が直接会う「スクーリング」が行われることもある。開校式も三次元空間——BBTが入るオフィスビルの中で行われた。

「開校式に参加したのは35人くらい。それが生の大前さんを見た最初です。ああ、本物だ、と思いましたね。あの日の大前さんは機嫌が良かった(笑)。というのも、後日行われたスクーリングのときの大前さんの印象が強烈だったからです。部屋に入ってきたときの威圧感が異常なほどに高かった。ものすごく機嫌が悪いように見える。でも、話し始めると、ぱっ、と明るい口調で機嫌良く話すんです」

冒頭の場面、「エアキャンパス」の中で大前さんが大学院生たちに「全員落第だ」と宣告したときも、その威圧感は強烈だった。

「あのときの大前さんは本気でした。テキスト(文字)オンリーだから、かえって怖い。しかし、課題をきちんとやっていた者まで落第にされてはたまらない。私も必死にエアキャンパス上で大前さんを説得しました。このときにずいぶんと鍛えられたと思います。以来、誰に会ってもビビらなくなりました。誰であっても、大前さんと比べるとたいしたことはない(笑)」

生まれたばかりの大学院。その一期生に向け、本気で全員落第だと告げる大前校長。全力で反論し説得する学生。この瞬間から、BBT大学院は次の段階に入っていったのかもしれない。大原さんは、自分が調べ抜き考え抜いたことが認められた日のことをはっきり覚えている。

「開校してすぐ、ゴールデンウィーク明けに『こういうことを始めます』とアナウンスがあって、RTOCS(注:現実の企業が直面している問題を対象として出題される「リアルタイム・オンライン・ケーススタディ」)が始まりました。こっちも毎週すぐレポートを出していましたが、それがよく『大前研一ライブ』の中で使われたんですよ。これが嬉しくて」

大原さん、2年間BBT大学院で学んで、何を手に入れましたか。

「自分で考えられるようになりました。業界の方向は間違いなく読めるようになりましたね。ただ、方向が読めるようになるほど、業界の動きが遅いことに、変わろうとしないことに気づく。そうなってようやく『あっ、これが大前さんの抱えている悩みなんだな』とわかるようになりました。大前さんひとりにやらせるのではなく、私たちも変える側になって実行していかないといけない。そういう忸怩たる思いは持っています」

今、大原さんはM&Aのプロフェッショナルファームを設立し、引退する創業社長たちと次世代をつなぐ新しいビジネスに挑んでいる。最後にひとつ確認しておこう。大原さん『新・資本論』の謎は解けましたか。

「2004年から今日まで『大前研一ライブ』をずっと見続けて、大前さんの話を死ぬほど聞くことで、だいぶ、解けました。ただ、大前さんは今でも『~ライブ』の中で毎回、30~40%は必ず新しいことを話す。そこが恐ろしいんですよ(笑)」

(次回は《大前門下生に聞く[3]——アタッカーズ・ビジネススクール》。6月10日更新予定)