1日で読めたのは、自分のことに思えたから
【サヘル】1日で読めちゃったのは、自分自身のことを読んでいるみたいだったからです。私のとはまた違った家族像でしたけれど、それでも痛いほどわかります。「わかる、わかる。うん、わかる……」って、私が黒川さんのインタビューに答えているんじゃないかと錯覚しました。これまでの私の人生って、なかなか誰とも共有できないと思っていたのに、「ここにいた! 同じ痛みを共有できる人がいた」っていう思い。私は本が好きで、いろいろ読んでいますけど、ここまで心から共鳴できる本に出合ったことはないです。「やっと出合った!」っていう感じです。
生きていることが不思議なほどの過酷な日々を過ごす母と娘は、それでも生きることを選んだ――。
母・沙織(仮名)は生まれてすぐ、京都府の山奥にあった「里子村」のお寺に兄とともに預けられ、過酷な生活を強いられる。小学校を卒業する頃に、突然父親が現れ、先に引き取られた兄とともに家族4人の新生活が始まるが、それは、本当の地獄だった。継母からは言葉の暴力、実の父親からは性的暴力を含めた壮絶な虐待を受ける。沙織は、20代で死ぬことを人生の目標にした。その後、結婚して2児を授かるが、娘、息子ともに視力に障害を持って生まれてくる。娘・夢(仮名)はとても育てにくい子どもで、沙織から夢に対する殴る蹴るの虐待が、就学前まで続く。
娘・夢には母・沙織から暴力を受けた記憶がない。だが、10代になってからも続いていたのは、「あんたは、ママをいじめるために生まれてきた悪魔なの」という言葉の暴力。「ママの中に、何人かの人格がいる」と母から解離性人格障害の症状を感じとる。突然怒りのスイッチが入る。それがいつ起きるかわからない。「家の中で安心できるのは、トイレだけ」だったという。中学2年生の頃、父の不倫が原因で、両親が離婚。荒れ狂う母の姿を傍らに、夢の「死にたい病」が始まる――。
互いに行き違う母と娘の、それぞれの心の叫びをモノローグの形で綴るノンフィクション。
【黒川】ありがとうございます。本の中では、母の沙織さんと、娘の夢ちゃんに、それぞれ別々にインタビューをして、大部分がそれぞれのモノローグで語られているんですけれど、ときどき私の語りが登場します。
【サヘル】でもそれが、2人の人生の物語と急に切り離されるわけではなくて、逆に、母と娘をつなげるへその緒みたいな感じがしました。黒川さんのこのつなぎ止める文章があるからこそ、交わらない2人の心がわずかにつながっている。母の沙織さんにとっても、娘の夢ちゃんにとっても、黒川さんの存在がすごく大切な役割だったのかなあって思います。血のつながりではないからこそ、母のような存在だったんじゃないかなと、読んでいて思いました。
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