帯状疱疹ワクチンと認知症予防

ここからが今回の本題です。近年、帯状疱疹ワクチンを接種した人は、帯状疱疹だけでなく認知症になるリスクも下がっているという観察結果がいくつも報告されています。その中でも特に注目されたのが、2025年に英国ウェールズで行われ、『Nature』誌に掲載された大規模な研究です(※2)。この研究では、「回帰不連続デザイン」という手法を用いて、単なる関連ではなく、因果関係を推定することを目的とした検証が行われました。

これまでも帯状疱疹ワクチンを接種した人は接種していない人に比べ、認知症の発症率が低いとする研究が複数報告されています。ただし、そうした研究はあくまで何らかの関連があるという「相関関係」を示すものであり、ワクチンのおかげで認知症にならなかったという「因果関係」は断定できません。