ICになることをどう切り出すか

田代理事長はもともと川崎汽船に勤務するサラリーマンだった。最初は営業職からのスタートだったがジョブローテーションで配属された人事の仕事が面白くなり、社会保険労務士の資格を取得するなど、人事職としての専門性を深耕させていった。そしてジョブローテーションで人事の専門職というキャリアを中断されるのをよしとせず、2005年に退職しICとして独立。ただし、最初の顧客となったのは勤務先であった川崎汽船であった。

「『独立し業務委託契約という形で会社と関わらせて欲しい』。そう会社にお願いしたんです。今までの雇用関係ではなく、別の関係を結ばせてほしいと。私は決して会社がイヤになったわけではないし、海運業への愛着も変わりません。だから『辞める』ではなく、『契約の変更』をしたいと言いました」

話を聞いた上司は「そうか、社長になるのか」と言って提案を受け入れ、田代氏のICとしての歩みが始まった。川崎汽船からの収入はそれまでの半分に減ったが、他の企業からの委託契約獲得に成功し、初年度からサラリーマン時代と同等の年収を確保した。現在も川崎汽船との契約を継続しながら、人事の専門家として活躍のフィールドを広げている。

田代氏のように独立する際、勤務していた会社を最初の顧客として契約するICは少なくない。そうするには社内で「この分野の専門家」と認知され、業務を依頼するメリットが明確にイメージできること、そして仕事人としての信頼を得ていることが重要である。要するに、自分の独立準備で会社の業務をおろそかにするような信頼のおけない人に、仕事は発注されないのである。