エイベルによる三次元の事業定義とは

このような事態に直面し、「事業とは何か?」という問題が俎上に載せられた。そこでGEがハーバード大学と組んでつくり出した新たなフレームワークが「戦略計画」であった。

この枠組みをつくったデレック・F・エイベルは同時に、顧客層と機能、技術という3つの次元による事業定義を戦略計画の前提として提唱した。事業の定義で重要なことは、誰に対して、どういう価値を、どのような技術を用いて提供するかにある――それがエイベルの主張の骨子である。

今から見ると、エイベルの主張はただ当たり前のことを言っているように感じるかもしれない。だが、発表当時は製品と市場の二次元で事業を捉える方法が主流であった。つまり、エイベルは二次元だった事業定義のフレームを三次元に変えたのだ。

別の観点からエイベルの事業定義を捉え直すと、レビットの「マーケティング近視眼を避けよ」という主張の限界を克服する試みであったといえよう。

その意味では、レビットの主張は論文を発表した当時のまま残っているのではなく、それがエイベルの「事業定義」に活かされたうえで現在に受け継がれているわけである。

「マーケティング近視眼を避けよ」はあらゆる会社にとって有益な警句であるが、ゆきすぎればマーケティング遠視眼の落とし穴にはまってしまう。

結局、近視眼と遠視眼の間で最適なバランスを取ることが重要であり、最近のように換金性が極めて高い資産が重要な状況では、マーケティング遠視眼の弊害を避けるように判断するのが基本的な方向性となろう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=宮内 健)