人前で話すと激しく緊張して、思いが伝えられないのを何とかしたい。「喋り屋いちろう」こと古舘伊知郎さんに、人前でリラックスして話すコツを聞いた。答えは、意外な方向からやってきた――。

自分ではなく相手をリラックスさせる

一対一の商談でもプレゼンでも、何百人、何千人を相手にしたトークライブでも、マスメディアやYouTubeで顔の見えない無数の人間を相手に話すときも、心がけることは全部一緒だと僕は考えています。

古舘伊知郎さん
写真提供=古舘プロジェクト
毎年開催しているライブ『トーキングブルース』。約1000人を相手に1人で2時間以上しゃべる。

大勢の人に訴求力のある話をするときは、その中の特定の一人に向き合うんです。「みなさんこんにちは」という心持ちが一番ダメ。特に話のクライマックスに向かうときは特定の一人、例えば「前から15列目の、チェックのジャケットを着ていらっしゃるあなた、年代的に僕と近いあなたに言いたいんですよ」と呼びかける。すると、周囲の人の意識がその人に向かってぞわぞわ、ぞわぞわっと集まってきます。半ば他人事のように聞いていた人たちに、「自分に言っているんじゃないか」と自主性を促すんですよ。