今も付いて回る「甲状腺エコー検査」

今でも年に2回、北海道に住むわかなさんの元に、福島県立医大から甲状腺がんについて検査結果などの情報が封書で送られてくる。

わかなさんはしばらく前から福島県の「県民健康調査」は受けずに、通常の健康診断時に甲状腺のエコー検査を行うことにした。

「年2回の封書が、その1回分が葉書になったんです。おそらく経費節減のための、簡略化でしょうね。私は県立医大からこれが届くたびに、毎回腹が立って、くしゃくしゃにして破り捨てたくなる。なんで、こんなのが必要なんだ。私の人生になんで、こんなもの(甲状腺エコー検査)が付いて回るようになったのかって」

わかな『わかな十五歳 中学生の瞳に映った3・11』(ミツイパブリッシング)
わかな『わかな十五歳 中学生の瞳に映った3・11』(ミツイパブリッシング)

その感情が少し、別のものに変わった。

「今回、お知らせが届いて、ようやく自然と思えたんです。『ああ、私、被曝者なのね』って。突然、何の前触れもなく腑に落ちて、『あっ、被曝者なんだね』って」

ようやく客観的に、状況を見られるようになったと、わかなさんは自然に思う。

伊達市の事例からもわかるように、今後も、日本のどこであっても、原発事故が起きれば優先されるのは経済であって、命ではないことがよくわかる。

15歳で体験したその事実は、決して消えるものではない。そのこと全てを受け止めて、北海道の大地で、わかなさんは溌剌と、元気いっぱいの笑顔で、今、この時を生きている。

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